top of page
執筆者の写真羽田空港増便問題を考える会

新飛行方式にはやはり無理があった!


課題山積の新飛行ルート案、見えてきた真の問題点。「大田ジャーナル(*) 2018年5月号」から著者の承諾を得てここに転載します。

大田区長要望に国交省回答、安全、騒音に確実な対策示せず。

現実には安全脅かす事象次々、嘘も発覚

危険と騒音を住民に一方的に押し付ける新飛行方式による羽田空港の増便・運用変更計画は、その無謀さが時が経つほどに浮き彫りになろうとしている。果ては、この新方式以外には策はない、と国交省が主張してきた根拠自体にまで重大な疑念が生じた。日々明らかなのは、この運用変更に再検討を求める住民の要求にこそむしろ確かな根拠がある、ということだ。

計画の根拠は崩れている

さて国交省がこの計画の出発点に置いたものは、今後の航空需要への対応として1時間90便運航確保がどうしても必要、とのためには提案の飛行方式しかない(原稿方式では1時間80便が限界)とするものだった。だが、そもそも1時間90便の必要性自体、住民に危険と騒音を押し付ける理由としては甚だしく正当性に欠け、住民は納得していない。ところがその上に、本誌が独自に確認したところ、国交省が提案する時間帯で、住民への危害を回避できる現行方式でもすでに1時間89便の運航が行われていたのだ。

新方式以外方策はないとする国交省の言い分は嘘だったというしかない。先の89便は国交省認可の下に設定された運航ダイヤであり、国交省が十分承知していたものなのだ。現行方式でもできるのに、承知の上でできないと嘘を言い張り、危険が増しこれまでなかった騒音被害まで引き起こす飛行方式をわざわざ強要するなど、信じがたい愚策だ。こうなると、この策の裏にはまだ隠された目的があるのでは、との疑念まで浮かんでくるのもやむをえない。いずれにしろ、今回の計画には全てを明らかにした上で全面的な見直しが必要であることは明らかだろう。

国交省回答は今なお曖昧

上に述べた根本的な問題とは別に、4月17日に開かれた大田区議会羽田空港対策特別委員会で、昨年5月10日付で大田区長から出されたこの問題に関するより詳細な情報提供を求める要望書に対し、国交省から回答が届いたと報告された。この要望書については本誌でも昨年6月号で報じたが、および腰ながらB滑走路の長距離国際便仕様の取り止め、落下物対策の具体化など若干の踏み込みを見せたものだった。同年2月には地元町会で構成される移転騒音対策連合協議会から懸念を示す2度目の要望書が出されるなど、住民の懸念が少しも静まらないことが圧力として作用していたことは明らかだった。この要望書に国交省は1年近くもかけてようやく回答したのだ。

 この間には、人的被害も出かねなかった1件を含め、昨年9月以降立て続けに航空機からの部品落下が発覚、という事態が起きた。住民がつとに指摘していた危険が白日の下になったのだが、それまでは住民の指摘を鼻であしらっていた国交省はおっ取り刀で対策を迫られた。まさに泥縄だ。が、ともかく今年3月26日に落下物対策基準案がまとまったということで今回の回答にいたった、ということだろう。

 ところがこの回答、部品落下に対して先の基準案策定を安全対策への踏み込みとして自慢げに示している以外、安全や騒音で懸念解消を住民に担保する内容はない。B滑走路の長距離国際便使用取り止め要求にもいわばゼロ回答だった。さらに先の基準案にしても、図入りでそれなりの体裁は整えられているが、結局は部品落下根絶の保証ではない上、外国機への強制力など、実効性にも数々の疑問が残るものでしかない。結局、1年近くの検討を経てなお、相変わらずの、抽象的な決意表明のレベルを超えていないのであり、今回の回答は、問題の飛行方式には最初から無理があった事を、今さらながらに明らかにしていると言ってよい。

現実が再検討を迫る

 今回の回答には、要望されていながら、新方式に伴うゴーアラウンドコースの明示もなかった。それは、様々な条件の中でコースが今なお確定できていないことの告白にほかならない。この問題も含めて、事前に解決しておくべきでありながら現実には処理に苦悩する課題がほかにもなお残っていることが想像できる。落下物問題が泥縄での間にあわせ的対応だったことを改めて思い起こすことが必要だ。事が起きてからの泥縄対応の繰り返しなど、住民を実験材料に使うに等しく、到底ゆるされるものではない。

 この怖れを裏書するような問題が、先の大田区議会特別委員会のあった日に明らかになっていた。4月11日深夜、バンコク発羽田着のボーイング747-400型機が、空港から北東約8km手前(東京湾上)で「対地接近警報装置」が作動、着陸やり直しをしたというものだ。国交省はこの事態を「重大インシデント」に認定、調査に入った、と4月17日に公表したのだ。これが新飛行方式であれば、この警報作動、つまり異常な低空飛行は完全に住民が生活する陸上部で起きていた。ぞっとするような事態だ。さらに、全日空所有B787型機エンジンの約半数が安全に難があり、運行条件が限定される事も明らかになっている。げんじつには、安全を脅かす問題がさまざまに潜んでいる事実が突きつけられている。

 住民に危害を及ぼさない飛行方式こそ必要であり、羽田空港運用変更の強行は住民を実験材料にするような暴挙である事が、ますますはっきりしてきた。声を大に計画の見直しを求めなければならない。     (羽田空港を監視する会・大道寺)

*大田ジャーナル 発行:大田地域ネットワーク通信編集委員会 

         oj.hiroba@gmail.com


閲覧数:134回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page