top of page
執筆者の写真羽田空港増便問題を考える会

住民引き下がらず、アクション次々-大田ジャーナル10月号より


危険、無謀な計画絶対ノー!

 政府は、羽田空港の増便、引用拡張を来年の夏ダイヤから実施すると公表、都心低空から進入するコースに対し、新たに設置した電波誘導装置の作動テストを国交省保有機を使って毎朝実施している。このテスト機は小型の数人乗りセスナ機だが、飛行コース近辺の住民からは早くも、この小型機ですら騒音が大きいとの声があがり、その実情については本誌でもいずれ伝えたいと思っている。いずれにしろこの計画の無謀さ、危険さは全く払拭されていず、各地の住民は引き下がることなく計画の取りやめを求め様々な行動を起こし反撃に立ち上がっている。

区と区議会に公開質問状と陳情

 まず大田区では、「羽田空港増便問題を考える会」が、8月15日の国交省交渉に続いて、9月20日改めて区長に公開質問状を提出した。区としての対応姿勢を質し、周辺住民の生活環境と安全を守る見地から羽田空港の運用について国交省と何項目にもわたって具体的に取り交わしてきた内容の堅持を求めるものだ。

 さらに同日開かれた区k議会羽田空港対策特別委員会には、住民から7件の陳情が出された。保育園の外遊び時間が制限される可能性、視覚障害者の外出が困難になる可能性、降下角3.5度への変更がはらむリスクを指摘し、新運用方式の見直しを求めて欲しいとするもの、また区議会として見直しの意見書提出を求めるもの、羽田空港のあるべき姿を区が率先して示すよう求めるものだ。落下物の危険と騒音に起因する生活侵害という従来から指摘されていた問題に加え、住民にはまだ全く説明されていない降下角変更というリスク要因が新たに出現したことに対して、住民が改めて懸念を強めていることが反映されている。

3.5度、国内では稚内空港だけ

 しかし結論を言えば、採択を主張したのは共産党と生活者ネットの委員だけの少数として、上記の陳情は今回もことごとく不採択にされた。羽田空港を巡って政府と厳しく対峙してきた大田区政の積み重ねを無にしかねない事態だ。しかも不採択を主張した会派の委員もその理由説明の中では、陳情者の思いは理解、などと断っている。彼らもリスクがあることは否定できないのだ。とすればあえて不採択としなければならない理由は何なのか。政府への追随が露骨であり、地方自治のあり方としても大きな問題が露になっている。

 ところでこの陳情をめぐる審議ではこれまで議論のなかった論点が2つ出てきたのでそれを紹介したい。第1点は降下角。事故のリスクが高まる変更をあえて行う無謀さが指摘されたが、区当局は、ICAO(国際民間航空機関)の基準内、という国交省説明を繰り返すだけ。しかし基準内というものの、ICAOの推奨はあくまで3度、3.5度は上限であり、地形や障害物回避という特別な場合のみ適用化という窮余の策に過ぎず、その基準の決め方自体にリスクの確実な高まりが折り込まれているのだ。そしてそれは区も認識している。だからまさに問題は、この窮余の策を住民が密集する都心コースに設定することが本当に適切なのか、にある。だたそれに、国交省も国交省説明をオウム返しにする区も全く答えていないのだ。

 さらに3.5度の実績についての質問にも、国内では稚内空港、海外ではサンディエゴ空港、というたった2例しか明らかにされなかった。少なくとも稚内空港周辺の人口が都心とは比べ物にならず、当該空港の便数も少ないことは明確であり、この実績はむしろ、今回の降下角変更の異常さを際立たせるものでしかない。

リスクの平等負担?

 第2点は、今回の新飛行コース提案がこれまで千葉県が引き受けてきたリスクを軽減し、都民も平等にそれを負担するもの、という主張が出されたことだ。自民党の湯本委員が主張した。一見もっともに聞こえる主張だ。

 しかしこの主張では、今回のコースでも千葉県上空の飛行は依然残り、しかも、これまでのコースであっても高度3000フィート以下の部分は東京湾上であり陸上にはなかった、つまり千葉県上空にはなかった、という事実はぼかされている。その意味でこの主張は、今回都心と川崎コンビナート上に設定されている飛行コースは、これまでになかった異なった種類のリスクを住民に押し付けるもの、という肝心な問題から注意をそらすある種のまやかしであることを指摘したい。

 リスクの平等負担というものの、負担は常に飛行コース直下近辺の住民にのみ押し付けられるのであり、航空機利用者、つまり航空機利用の受益者とリスク負担者が完全に分離されていることの不公正さも含め、この議論には大きな問題が隠れていることも強調したい。世界の大勢はその点も加えて、空港を大都市から距離を取るようになっているのであり、それに逆行する今回の計画が住民の犠牲をかえりみない政策であることを、改めて明確にすることが必要だ。

表参道で初のパレード

 そして9月21日、都内各地から住民が集まり、約150人で都心低空飛行反対を訴え都心の表参道を初めてデモ行進した。7月19日に大井町で「都心低空飛行問題シンポジウム」を開いた実行委員会が改称した「羽田問題解決プロジェクト」が主催した。前日までの予報ではかなりの雨が心配された行動だが、当日は雨にも会わず、雨を予想して傘に色とりどりに思いを貼り付けたビニール傘など、賑やかなデコレーションを掲げて、また沿道でのチラシ配り隊も加えて、行楽客でにぎあう街頭に力一杯訴えが届けられた。チラシを受け取った人とは、この問題は許せないと話が弾む場面もあった。しかし、行楽に訪れた人のチラシ受け取りは必ずしもいいとは言えず、問題の周知に向けこのような行動をどんどん重ねる必要も実感させられた。

 なおこのデモの出発前段では屋内集会が行われ、海江田万里、初鹿明博、大河原雅子(以上立憲民主党)、無所属の松原仁各衆議院議員、吉良よし子(日本共産党)、福島みずほ(社民党)各参議院議員も出席、あまりに無謀、危険なこの計画を見直させるためにともに全力を挙げよう、と参加者と共に決意を固めた。またこの集会には「れいわ新選組」の山本太郎代表からもメッセージが寄せられた。

 さらに川崎市でも住民による緊急の市民集会が9月23日に開かれ、臨海部の石油コンビナート上空に向かう飛行の見直しを強く求めた。この問題では今後も様々な行動が重ねられるだろう。それらを連ねながら引き下がることのない住民の姿をはっきり示すことが決定的になっている。 (羽田空港を監視する会・大道寺)


閲覧数:21回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page