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  • 執筆者の写真羽田空港増便問題を考える会

川崎コンビナート地域(臨海部)の安全性 現状と問題点

更新日:2020年3月6日

長年川崎コンビナート地域で勤務してこられた竹内康雄さんの記事(日本の科学者Vol.47No.6 June 2012) を抜粋


1 川崎コンビナート 現状と問題点

 コンビナート地域には、大量のナフサ(粗製ガソリン)や原油、LPG等の引火性可燃物が存在し、これらは一度火がつくと消すことが極めて困難である(ナフサについては少なくとも日本では消火した実績がない)。

 この地域には、可燃性物質だけでなく、化学物質製造原料、製造過程における毒ガス、毒性物質の流失の可能性も存在する。

 タンクと防油堤を含めた岸壁の耐震強度(側方流動)と構造的(スロッシング)対応は不十分と言わざるを得ない。そして解放点検頻度は、大型タンクには設定されていない。

 また、LNG(天然液化ガス)は、地震や災害の経験も少なく、耐震強度も低い(設計時150ガル)可能性がある。

 LNGタンクは、いかなる条件でも約-160℃の確保が求められるが、はたして電気の遮断などのときでも、これを維持できるのか、LNGタンクは、危険物の範疇に入らないことから消防法の適用を受けず、常圧での貯蔵であることから高圧ガス法の適用も受けていない。また貯蔵タンクの開放点検頻度の設定もない。 

 コンビナート地域で働く労働者からみるとコンビナート島部は、各企業により分割された状態となっており、各企業の私有地を道路が結んでいる構造となっている。

 当然のこととして各企業は、私有地の周辺を塀や有刺鉄線で囲んでいることから、発災場所によっては労働者にとって避難路も存在しないこととなる。

 2011年12月19日に神奈川県が発表した「慶長型地震」における「神奈川県津波浸水予測図(素案)」は、川崎区の大半が浸水することを示している。

 コンビナートの大半が浸水すると同時に、コンビナート地域を飲み込んだ海水は、隣接する居住区に押し寄せることとなる。

 ここで、東日本大震災における気仙沼の津波火災を想起する必要がある。

 つまり、住民から見れば津波による浸水地域には海水だけが来るわけではなく、コンビナート地区を通過したことにより、海水の上に可燃物・油が乗ってくることを前提としなければならない。津波による浸水地域は油火災(LPGも含め)が発生する可能性が大きいと言える。

 コンビナート地域での地震と津波の襲来による同時多発的発災を考えると、現在の公設消防と共同防災の設備は絶対的に少なく、職場自衛消防との連携を含めても対応できるとは考えられない。

 ましてや前述したように、各企業の私有地を道路が結んでいる構造では消防車をはじめとする消火部隊は、発災地点へ到達することも困難な恐れがある。公設消防と共同防災および職場自衛消防は、その能力を連携して有効に働かせる構成になっていない。

 つまり情報や消防力の共有ができていないからである。

 コンビナートのどの奇病のどのプラントが破壊したかを知ることによって、隣接住宅地へ知らせるべき危険性の種類、防御方法を公設消防は知らなければならない。

 また、共同防災や職場自衛消防は同時多発火災を想定していない組織であり、職場自衛消防は、自分の職場だけに対応する組織であり、共同防災組織は各奇病からの出向者で構成されているのが実態であるからである。

 これらの問題をより複雑化させているのは、管理監督部門が、危険物は市の消防、高圧ガスは件、LNGにいたっては経済産業省、というように別々になっているからである。

 また、大規模災害時への対応としての「石油コンビナート等災害防止法」では、対策本部長は知事、その下に現地本部長として各市長が付く形で、行政的縦割りが存在する(扇島の南半分は横浜市、北半分は川崎市)ことである。つまり危険性を軽便すべくチェック機能を果たすべき監督部門が別々であり、発災後の対応の地域的に統一されない可能背が存在しているのである。

 ましてLNGは、前述したように法的にも「石油コンビナート等災害防止法」の外に置かれており、大規模災害の想定外に置かれているというのが実態である。

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